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携帯電話 [短編]

 お初にお目にかかります。
 私、旦那様にお仕えして二十年になる執事。
 詳しいことはもうしませんが、どうぞ「バトラー」とお呼びください。
 『最近の風潮』とやらで、ここで日記を書かせていただくことになりました。
 以後、どうぞお見知りおきを。
 

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 旦那様は、家督を坊っちゃんに随分前にお譲りになられました。
 『貯蓄と年金で悠々だー!わはははは!』という毎日をお過ごしです。
 私は長いあいだ旦那様にお仕えしておりますが・・・。
 
 ・・・昔は、真面目な方だったのです。
 一生懸命お仕事に励まれ、坊ちゃまを男手一つで(八割は私ですが)育て、
 私も旦那様がやっと静かに暮らすことができると、隠居をお祝いしておりました。
 しかし隠居してみると毎日が本当に静かで、退屈な日々と感じられたようで。
 何かとおもしろい(?)ものを見つけられては、私に話をふられる。
 
 いえ、旦那様のお相手をいやだなどと失礼なことは申しませんが・・・。
 お仕事一筋に生きてこられた旦那様は、失礼ながらすこし『ずれて』らっしゃる・・・。
 世間様とは四十三度ほどずれておられるのです。
 今日も、朝から旦那様は全開でおられました・・・。
 
 
 
 
  
 
 さて、私が今日もいつものように銀器を磨いていたときのことです。

 突然旦那様が(これもいつものことですが)いらっしゃいまして、
 興奮した様子で私におっしゃいました。

 

 「バトラー、私にもやっと“メル友”とやらが出来たぞ!」



 旦那様は隠居なさる前から携帯電話をお持ちでした。
 主にお仕事にお使いになられておりましたが、

 しかしあくまで“ビジネス用”でございます。

 気軽にメールでおしゃべりをするご友人をお持ちになっておりませんでした。

 別段気にするご様子もなかったのですが・・・。
 
 どうやら先日、使用人達が携帯電話でメールしており、

 それを偶然ご覧になって、羨ましくなられたそうでございます。

 

 『バトラー・・・、私も“メル友”とやらが欲しいぞ・・・。』

 『・・・左様でございますか。』



 こういう微妙な問題に対して、私ども使用人が申し上げることはなく、

 私も特に何も申し上げられ、いや、申し上げませんでした。

 

 

 「それで旦那様、その“メル友”さんはどのような方でいらっしゃいますか?」

 

 「いや、私もよくは知らないのだがな、初めてなのに丁寧な文を送ってくれたのだよ。

  何回かやりとりしたのだがな、今日のメールによると・・・。
 
  なにやら『当サイトの利用料金10000円を今週中に支払っていただけませんか』とか・・・。」

 

 

 いえ、旦那様、それはインターネット詐欺です。

 
 
 後ほど、相手にはしかるべき処置をとらせていただきました。
 
 
 
 
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 えー、かねてから小説を書きたいとおもっていたのですが・・・。
 ついにやってしまいました(汗)。
 もしかしたら三日坊主になるやもしれませんが、
 なにとぞ、温かい目で見守ってください、お願いします(汗)。
 
 
 
 
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